オープンソースライセンス研究所
 
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リレーコラム
2013/11/08

リレーコラム(第2回)

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「自社で開発したソフトウェアをオープンソースにする」
~オープンソース勤怠管理・人事給与MosP~

株式会社マインド 取締役
一般社団法人オープンソースライセンス研究所 理事
屋代和将

私が勤める株式会社マインドは2013年10月から27期目に入ったオープンソース勤怠管理・人事給与システムMosPのソフトウェアメーカーです。設立当初はオフコンで販売管理や人事給与など多種多様な業務アプリケーションの開発を行うことがメインの会社でした。そのような企業がなぜオープンソースに注力し、自社で開発したソフトウェアをオープンソースにしたのかをお話させていただきます。あくまでもひとつの例として少しでも皆様の参考になれば幸いです。

1980年後半~90年中頃まで、RPG言語を中心に大手SIerからの下請け開発を行っていました。開発案件は豊富にあり、技術のスペシャリストが1人で2~3人分の仕事をこなすこともありました。
そのような時代を経て業務の知識+RPG言語の知識を培ってきたのですが、1990年後半に入るとRPG言語の仕事が減り、徐々にJava等オープン系の仕事が増えてきました。

RPG言語をメインで開発していた弊社にとって、すぐに技術転換ができるわけではなく、まずは当時の社長が先頭にたち独学でJavaの勉強を始めました。そして、以前から業務アプリケーションを得意としていた社長は、Javaの勉強を兼ねてJavaで自社の人事給与システムを構築し始めました。それがMosPの前身です。

その際、利用した環境がApache,Tomcat,MySQLというフルオープンソースの環境でした。RPGで開発をしていた当社にとっては、開発に際し費用のかからない仕組みに衝撃を受け、これからの中小企業はオープンソースを使ってIT化をしていくことになると確信しました。

その後も社長一人でコツコツと自社人事給与システムを開発し続け、ひと通りの機能を実装し、社内運用を開始しました。社内で使っている分には特段の不自由なく利用でき、これは他社でも利用できるのではないかと考え始めたのです。しかし、それはすぐに甘い考えだということに気付かされました。

今までソフトウェアの開発は行ってきていたものの、販売ということは行ったことがなく、右も左も分からないまま同業の会社にソフトウェアの説明をして回りました。

どう?つかってみない? もし良かったら一緒に販売しませんか? などと話をするのですが、どうにも反応があまり良くありません。理由を聞いて回ると、「見た目」「機能」共に販売できるようなレベルのものでは無いことに気づきました。そして、今まで以上の工数をかけて開発しなくては売れるようなパッケージ製品にはならないことも理解しました。

とはいえ、自社で開発し自社で運用しているため、そのソフトウェアを保守していくにも工数もかかります。ただのお荷物になってしまってはしょうがないので、いっその事オープンソースにしてしまおう! OSもミドルウェアもオープンソースのお世話になっているのであれば、アプリケーションがオープンソースになっても良いのではないか!ということで、皆の認識も統一され2006年9月にオープンソース化しました。

オープンソース化の際に行ったこととして
1.    ライセンスの選定
2.    プログラムにライセンス表記を埋め込む
3.    SourceForgeに登録
4.    ホームページの作成
の作業です。

当時はオープンソースに関するノウハウがなく、一からネットで調べ、ある程度の知識をつけた上で、すでにオープンソースに取り組んでいる方や、オープンソースの団体の門をたたき、情報の収集を行いました。

皆様優しく迎え入れてくれたことを今でも覚えています。

オープンソース化した時は物珍しさに興味を持ってくれた人が、日に数件ダウンロードしていくような状況が続きましたが、すぐにはビジネスに結びつきませんでした。実際ビジネスに結びついたのは2年後の2008年です。その後もこつこつと開発を続け、2009年にはマーケティング活動にも力を注ぎ、MosPの開発案件が途絶えることは無く、今では数件のMosP案件が並行し続ける状況にまでなりました。それは、こつこつ開発を続けてきたことが一つの“かたち”になったのだと思います。

わからないことだらけで進めてきた自社製品のオープンソース化でしたが、オープンソースに関わる周りの仲間がいたからこそ続けることができ、今でもビジネスとして続けることができているのだと思います。
是非、自社製品をオープンソースにするとき、オープンソースを利用するときにはオープンソースに関わる人に相談をしてみてはいかがでしょうか。きっと一味違った方向性が見えてくると思います。
13:31 | 投票する | 投票数(2) | コメント(0) | リレーコラム
2013/09/05

リレーコラム(第1回)

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■エンタープライズにおけるOSS利用のポイント

(株)オージス総研 細谷竜一

 

図1

上図:某公益企業グループのIT基盤におけるOSS導入の経緯

ThemiStruct(テミストラクト)はオージス総研におけるOSSベースのIT基盤製品のブランド名です。

 

オージス総研では、2007年以降、某公益企業グループで利用するIT基盤における商用製品のOSSでの置き換えを積極的に支援してきました。上図は具体的にIT基盤のどの部分をどういうOSSで置き換えていったかを示しています。

この図からわかるように、OSSでの置き換え範囲はIT基盤の広い範囲に及んでいます。ここまで積極的にOSS利用を進めた理由は、増大する一方であったITコストを最適化する上でそれが有効だと考えられたからです。

より具体的には、OSSへの置き換えによってユーザ数とライセンス料の分離ができる点が重要です。商用製品では、ユーザ数ベースの価格体系になっているものも多く、この場合、ユーザ数が増えれば支出もダイレクトに増えていきます。一方、OSSは自力で使いこなすならライセンス料は無料であることは当然ですが、たとえサポート付きの商用OSS製品であってもCPUコア数ベースなどユーザ数に比例しない価格体系になっている場合が多いです。そのため、OSSベースで構築した情報システムのTCOtotal cost of ownership)は予見しやすく、IT予算を組みやすいという性質があります。

OSSとコストの関係については上述の通りですが、信頼性についてはどうでしょうか?企業がOSSを利用する上で問題となるのは、それに関するサポートをどこから得るか、という問題です。

もしユーザとなる企業側で自力でOSSを使いこなそうとすると、そのための技術者を育成あるいは雇用し、OSSのソースコードを読み、バグが見つかればパッチを作成し、また、開発コミュニティの一員となるために成果をOSS開発プロジェクトに還元したり・・・といった取り組みが必要です。しかし利用しようとするすべてのOSSについてこのような取り組みをユーザ企業内で行うことは必ずしも現実的ではありません。

そこで、別の会社から有償のサポートを受けることになります。上述の導入事例では、オージス総研がサポートを提供することとし、ここにOSSの技術的ノウハウを蓄積していきました。また、OSSを、単に利用する一方でなく、OSS開発プロジェクトへの還元も行いながらコミュニティとの接点をオージス総研内に増やしていきました。

いくつかのキーとなるOSSについては、商用OSS製品を利用し、本番利用では商用ライセンスを買って根の深い問題は開発元からのサポートやパッチが得られるようにしています。

「有償サポートにおカネを使うのであれば、結局商用製品を使っているのとコスト的に変わらないのでは?」と思われる方もいるでしょうが、これは違います。OSSのサポートサービスは、ユーザ数に応じた料金ではない場合が多いですし、また下図のように、必要なフェーズに必要な程度だけのサポートサービスを購入できますから、コスト最適化が図りやすいのです。

他にも、OSSには、(商用製品にみられるような)古いバージョンの保守切れに伴う半ば強制的なバージョンアップ対応を回避できる、製品自体の開発がストップしてもソースコードが手元に残るためにメンテナンスしながら利用を継続することができる、といった特性があります。

このように、エンタープライズの長期的な発展を考慮したとき、それを支えるIT基盤におけるOSSの利用には様々なメリットがあると言うことができます。

 

以上

 

利用方法に応じたスタートアップ

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上図:オージス総研 ThemiStruct(テミストラクト)ホームページより

URL: http://www.ogis-ri.co.jp/pickup/themistruct/


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